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Language: Japanese/English

研究内容

所研究室では、「資源循環班」「粉体シミュレーション班」「廃水・鉱物処理班」の3つの班に分かれて研究を行なっております。
資源循環班は、さらに電気・物理・化学的処理の3つの処理方法に分かれています。
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    < 電気的処理 >

     高選択的・高効率な物理的分離技術である「電気パルス法」に着目し、分解が容易な設計・製造プロセスの提案につなげることにより、新しい資源循環生産システムの構築を目指しています。
     対象に最適化した電気パルス条件を見出すためには、分離機構の解明と機構に基づく適用性評価が必要です。また、それらの技術をコスト、環境負荷、資源効率の観点から評価・フィードバックし、最適化することで社会実装につなげていきます。

    ■ リチウムイオン電池正極材からの活物質の分離に関する研究
     2030年には、自動車用リチウムイオン電池の需要が2020年の10~20倍に増大すると考えられています。リチウムイオン電池(LiB)の正極材には、Ni、Co、MnやLiなどの経済的に価値の高い有価金属が含まれており、資源循環において、これら金属の回収が必要となっています。これら有価金属を含むLiB正極材に電気パルスを印加させ、活物質を集電箔(Al箔)から異相境界面にて効率良く分離する研究を行っています。最終的には、電気パルス法によって回収した正極活物質を再び電池に戻す電池再生を行い、省エネルギー・低コストのリサイクルループ構築を目指します。

    ■ 金属接着体・マルチマテリアル分離に適する易解体構造と易解体接着剤の研究開発
     自動車産業において、ライフサイクルの観点から、易解体やリサイクルを考慮した製品設計の必要性が高まっています。本研究では、自動車や航空機の軽量化のために使用されている接着剤で接着された金属接着体や鋼板とCFRPが接着されたマルチマテリアルを対象とし、電気パルスを用いてこれら接着体を分離させる易解体構造、および、フィラー添加による易解体接着剤に関する研究開発を行っています。

    ■ CFRP積層板からの炭素繊維の分離・回収の基礎的検討
     CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、軽量材料として自動車・航空機・風力発電などの様々な産業で使用量が増加しています。一方で、廃棄されたCFRPは焼却され埋め立てされており、資源循環において、CFRPからの炭素繊維の分離・回収、および、炭素繊維のリユース・リサイクルが必要となっています。本研究では、CFRPからの炭素繊維のリユースに向けて、電気パルス法を用いてCFRP積層体から炭素繊維を分離・回収し、回収された炭素繊維の強度評価などの行い、回収された炭素繊維のリユースへの基礎的検討を行っています。

    ■ 電気パルス粉砕後の廃太陽光パネルシートからの銀の選択回収の検討
     太陽光パネルには有用資源として銀が使用されており、リサイクルの過程においての分離・回収が課題となっています。本研究では、太陽光パネルのセル内の導電性の銀ペースト線に電気パルスを印加させ、銀ペースト線の細線爆発を行い、銀を粒子として選択的に回収する研究を行っています。また、電気パルスを用いた集合粉砕による太陽光パネルのセルからの銀の回収に関する研究を行っています。

    < 物理的処理 >

     リサイクルの基本は、「粉砕・分離」「選別」「回収」が組み合わさることで行われます。「粉砕・分離」は、機械的な外部刺激によるものが多く、多くの物理的現象を捉えます。未だ解明されていない現象が多く、様々な対象物の「粉砕・分離」を通じてそれぞれの機構解明を行っています。また、機械的な外部刺激だけでなく、物質が持つ特徴を活かした熱的な処理も行われ、物理化学的な検証やシミュレーションも同時に行っています。

    ■ 臭化物揮発によるPb選択除去の検討
     プラスチックのリサイクルにおいて、臭素を含むものは2006年から施行されているRoHS指令によって再生品に混入できず、その多くは廃棄、焼却処分されています。本研究では、臭素含有廃プラスチックを金属の臭化揮発材として有効利用することを見据え、臭化揮発が起こる最適条件について検討を行っています。

    ■ 銅・銀・錫の選択的な回収を含めた太陽光パネルリサイクルプロセスの検討
     今後、使用済み太陽光パネルの排出量は増加する見込みであり、大量のパネルをリサイクルする体制が必要となります。本研究では、今まで着目してこなかった錫も含めた有用金属の回収を検討します。同時に、企業ニーズに合った新規リサイクルフローの構築を目指します。

    ■ 二成分系スラグの粉砕に関する研究
     単一試料の粒径減少と粉砕速度は広く研究されています。しかし、実際の産業界では、多成分の試料が粉砕されています。本研究では、二成分系スラグを対象として粉砕試験を行い、どのような条件 (試料の組み合わせや粉砕条件) において一方のみの選択的粉砕が生じるかを明らかにします。また、このような現象をDEMシミュレーションによって再現することも目指しています。

    ■ プラスチック循環促進のための混入微粒子分離の基礎的検討
     ペットボトル成型時に、材料となるペレットにガラス等の不純物が混入しているとバーストの原因となることが知られています。ボトルto ボトルのリサイクル実現に向け、使用済みペットボトルフレークに含まれる不純物の高度除去技術構築を行っています。微量不純物の除去を目指すとともに、混入の原因を明らかにすることで、プラスチックリサイクルの促進を目指します。

    < 化学的処理 >

     リサイクルの基本である、「粉砕・分離」「選別」「回収」のうち、「回収」では化学的処理が用いられることが多いです。化学反応とその機構を正確に把握する事で、従来の処理法の改良や新しいプロセスの提案を行い、低コスト・高効率かつ多くの資源に適用可能なプロセスの構築を目指します。

    ■ 全固体リチウムイオン電池からの有価金属回収手法検討
     今後、EVなどの普及により需要が急増するとみられているリチウムイオン電池にはレアメタルが含まれており、循環型社会の実現にはそれら金属のリサイクルが求められています。本研究では固体電解質を利用した次世代リチウムイオン電池を対象として、焙焼や酸溶液プロセスを通じた金属回収プロセスの検討を行っています。

    ■ 正極活物質の金属溶出に及ぼすフッ素の影響の研究
     リチウムイオン電池のリサイクルの分野では、正極活物質とアルミ箔を分離する方法として水中電気パルスが有望視されています。この方法は低環境負荷、短時間で効果的に正極活物質を遊離させることができます。しかし、放電時にフッ素や他の貴金属も溶液中に溶出する可能性があります。そこで、フッ素の発生源と金属抽出への影響を調べるために、異なるフッ素濃度により浸出実験や、使用済みLiBの詳細な表面観察などを実施しています。

     粉体は、「気体・液体・固体」に続く第4の形態と評されることもあるように、非常に特異な挙動を示すことで知られています。そのため、実験的な手法による挙動の評価や測定が困難であるため、単純な単位操作であっても十分に機構が解明されていません。このような背景から、現状では運転条件が経験則に基づき決定されるため、最適化には莫大なコストが必要となる場合が多くあります。
     私たちは、粉体シミュレーションの一つであるDEM (離散要素法) シミュレーションを活用して、粉砕や分離、混合、造粒など様々な粉体プロセスの機構を解明し、それぞれのプロセスの最適化に取り組んでいます。

    ■ DEMシミュレーションによる媒体攪拌型ミルの粉砕性評価
     媒体攪拌型ミルは様々な産業分野で微粉砕を目的として使用されていますが、粉砕機構は解明されていません。そのため最適なミルの形状や運転条件を経験則により決定するため、その決定までにコストがかかります。そこで私達はDEMを活用することで実験では困難な粉砕機構の解明とともに最適運転条件の決定に取り組んでいます。

    ■ DEMシミュレーションにおける付着力を対象とした新規粗視化モデルの開発
     DEMは計算負荷が非常に高い手法であるため、大規模解析のためには追加の工夫が必要です。粗視化モデルにより計算負荷の大幅な削減が可能ですが、モデルの適用範囲はまだまだ限られます。本研究では粉体プロセスで重要な要素となる付着力を追加で考慮した新規粗視化モデル確立に取り組んでいます。

    ■ 破壊モデルを導入したDEM-CFDシミュレーションによるディスクミルの粉砕性評価
     ディスクミルは様々な産業分野で微粉砕を目的として使用されていますが、詳細な粉砕機構は解明されていません。そのため最適な装置形状や運転条件を決定するまでに実験のみでは高いコストがかかります。そこで私たちはDEMにCFD(数値流体力学)を連成したシミュレーションを活用し、また破壊モデルにより粒子の破壊を直接的に模擬することで実験では困難な粉砕機構の解明とともに最適な運転条件の決定に取り組んでいます。

    ■ DEMシミュレーションによる湿潤粒子の搬送プロセスの最適化検討
     湿潤粒子は液架橋力による付着や凝集が発生するため、プロセスにおける粒子挙動の制御が非常に困難であるケースが多々あります。そこで私達は搬送を対象とし、DEMにより湿潤粒子の搬送挙動解析や機構解明により搬送条件の最適化に取り組んでいます。

     廃水・鉱物処理班では化学的および物理化学的処理によって、坑廃水や工業廃水中に存在する有価金属の回収技術開発や有害物質の除去プロセスの提案および除去メカニズムの解明を行っています。そして、化学平衡計算ソフトウェアを用いて、独自で開発した廃水処理モデルを構築し、プロセスの最適化を目指しています。また、化学的手法である浮選を用いて、鉱物の選択的回収も行っています。
     基礎研究だけでなく、汎用性の高さや実際の現場を視野に入れた研究を心がけています。また、近未来の環境問題を想定した研究も行っています。

    ■ 硫化物法を用いたニッケル(Ni)含有酸性廃液からのNi回収プロセスの開発
     近年、Niを金属触媒とする有機化学反応プロセスが数多く開発されているが、反応後廃液にはNiが高濃度で含まれるため、それを回収することで新たなNi資源として再利用できると期待されています。本研究では溶解度の小さい硫化Niによる沈殿生成法に着目し、硫化水素の発生を抑制し高収率が達成できる反応プロセス構築を目的とした実験的検討を行っています。

    ■ 水銀(Hg)含有廃棄物の安定処理に向けた黄鉄鉱表面のHgの安定性評価
     黄鉄鉱は、厳格な管理が求められているHgに対し高い親和性を示すことからHgの不溶化剤としての利用が検討されています。しかし、吸着態Hgの安定性に関する知見は乏しく、最終処分場内でのHg再溶出など長期的リスクの懸念があります。そこで、本研究では様々な化学的条件における黄鉄鉱表面の吸着態Hgの安定性を調査し、Hg含有廃棄物の安定処分に向けた基礎検討を行っています。

    ■ ケイ酸塩鉱物生成による坑廃水中の亜鉛(Zn)除去
     Znを含む坑廃水処理では、Znが高アルカリ領域で水酸化物を形成する性質上、中和後の逆中和処理が必要となり、薬剤コストの増加が懸念されています。そのため、中性領域でのZn除去技術が求められおり、先行研究では水酸化アルミニウムや二酸化マンガンによる吸着・共沈除去が効果的であることが示されました。しかし、これら技術を用いた場合でも、環境負荷が高い坑廃水を対象とした際にはZn除去が不十分になる場合がある。そこで、本研究では新たにケイ酸塩鉱物に着目し、ケイ酸塩鉱物生成による新規Zn除去技術開発を行っています。

    ■ 高Ca/Mg含有水中での黄鉄鉱/黄銅鉱浮選分離の特性解明と分離効率向上のための新規手法開発
     銅鉱石の多くは経済的価値が低く、黄鉄鉱が多く含まれているため、黄鉄鉱と銅含有鉱物の分離効率に大きな懸念がありました。我々は、高Ca/Mg含有プロセス水または海水を、不要な黄鉄鉱と有用な黄銅鉱との分離を促進するための代替物として、浮選システムに統合することを試みています。また、銅の活性化およびCa/Mgの抑制効果を利用して分離効率を向上させる一連の新しい方法を開発しています。

    ■ カルボン酸層状複水酸化物を用いたオキシアニオン除去の解明
     層状複水酸化物(LDH)は、汚染された水からいくつかの有害な陽イオンや陰イオンを除去する能力があるため、非常に注目されています。最近の研究では、有機物で機能化したLDHがオキシアニオンに対してより高い収着親和性を示すことが示されています。ここでは、汚染水からのオキシアニオンの除去を促進するために、カルボン酸を用いたLDHを開発しています。また、オキシアニオンに対する詳細な除去メカニズムを、顕微鏡的手法を用いて解明しています。

    ■ 超酸性条件下におけるマンガンの自己触媒的酸化反応とFe-Mn分離への応用に関する研究
     酸洗後の超酸性廃液には高濃度のFe3+とMn2+が含まれており、金属リサイクルのために適切に回収する必要があります。一連の中和・酸化操作により、超酸性条件下でもMnをMnO2として固化できることを見いだしました。この知見に基づき、排水中に可溶なFeを残したままMnを沈殿させる分離プロセスの開発を試みています。